賃貸退去前のお掃除で敷金を多く取り戻せる?立ち会い前までに行うお掃除のポイントを解説
敷金は、基本的に賃貸退去時に戻ってくるお金です。しかしながら、自分の責において破損や汚損があると、敷金から差し引かれてしまうことがあります。
それは金額として万単位、時には数10万円以上になってしまうこともめずらしくありません。最悪、預けた金額以上に請求されてしまうことさえあります。
大切なお金ですから、できるだけ敷金は多く取り戻したいですよね!?
本ページでは、敷金をより多く取り戻す方法の一つとして「汚損」の対策について焦点をあてたいと思います。汚損=つまり汚れを自分でお掃除(ハウスクリーニング)することにより、敷金を多く取り戻すことについて考えます。
その勝負のタイムリミットは立ち会い日まで!あなたがより多くの敷金を取り戻すことができれば幸いです。
前提条件
ハウスクリーニングは契約に織り込み済みを想定
今日において、退去時には「プロによるハウスクリーニングが行われる」という旨、契約書に記載されていることが大変多いです。その場合、ハウスクリーニング代は敷金から差し引かれるようになっていることでしょう。
本ページでは、上記の前提で解説しております。
この場合、本来わざわざ自分でお掃除をする必要は無い……はずなのですが、現実問題としては必ずしもそうではありません。
敷金をより多く取り戻す可能性を高める為には、ある程度自分でもお掃除し、室内を綺麗にしておく方が無難です。
ハウスクリーニングが入るかわからない……という方は、契約書をチェックしてみてください。契約書(賃貸借契約書)には、全ての取り決めが記載されています。もしも契約書にハウスクリーニングのことが記載されていない場合、管理会社や大家さんに確認しておくと良いでしょう。
地域差もある
敷金の取り扱い・ルールは地域によって多少の差があるようです。例えばここ東京では、東京ルールなるものが存在し、それがガイドラインとして機能しています(比較的、借主に優しい内容です)。
東京ルールとありますが、東京以外でもこの主張が通ることもあれば、そうでないこともあります。というわけで、地域差によるところも大きいのが現実です。
そのため本ページの内容を実施しても、場合によっては敷金を取り戻すことが難しいこともあります。それも考慮の上、ご覧いただけますと幸いです。
会社差もある
さらにはややこしいことに、会社による差も存在します。例えば東京の大手不動産業者は、近年はガイドラインに沿った案内をしてくれることが増えた印象です。
つまり借主に有利に判定をしてくれるので、ハウスクリーニング等の費用を除き、難なくほぼ全額返ってくるケースもめずらしくありません。つまりその場合は、ほとんど掃除をしなくても良いことも意味します。
しかし現実は中小・様々な業者が存在します。そこで本ページでは、良くも悪くもない業者(貸主)であることを想定して解説しています。
敷金をより多く取り戻す原則
まずは、敷金をより多く取り戻すための基本原則から解説します。
全体を常識の範囲でお掃除しておく
先にも触れたとおり、退去時に入居者負担でハウスクリーニングが入る旨、契約書に記載されていることが一般的です。
この場合「自分でお金を払っている」わけですから、自分でのお掃除は必要ないように思います。しかしながら退去後に行われるのは通常のハウスクリーニングの範囲と考えて置いた方が無難です。
あまりに汚損が激しい場合。例えば、一度も掃除をしていなかったような特殊なケースでは、通常の範囲を逸脱し、追加で料金を取られてしまうこともあるかもしれません。
例えば以下の様な例です。
- 度を超した強烈な油汚れ
- カビだらけの浴室
- ありえない程に汚れたトイレ
こういった部分を、立会者からギョッと思われない程度に掃除しておきたいところです。
逆に考えると、徹底的に掃除してピカピカにする必要はないでしょう。全体として常識の範囲でほどほどに綺麗にしておく……という程度で良いと思われます。
(退去後にハウスクリーニングは入るけれど)これまでお借りしていた感謝の気持ちを込めてお掃除する……そんなイメージで考えてみてはいかがでしょうか。
特に個人の大家さんが立ち会うような場合は、心証が影響するケースもあるはずです。「この人は綺麗に使ってくれた」という印象を与えられれば、交渉も有利になるかもしれません。
原状回復にお金がかからないよう思わせる
敷金をできる限り多く取り戻すという観点からのお掃除(ハウスクリーニング)には、あらかじめ認識しておくことがあります。
それは、原状回復(元の状態に戻す)にお金が掛かると相手に思わせないようにすることです。
そのためには自己の責において発生した悪目立ちする汚れは事前に除去しておく・目立たなくしておくことが重要と言えるでしょう。
退去時の立ち会いは、言わば間違い探しのような一面もあります。
立ち会い時「あれ!?ここの汚れはどうしたんですか(直すのにお金かかりそう)」というような指摘をされないようにしたいものです。
例えば以下の様なものです。
- びっしりついた浴室の鱗
- 子供が落書きしたクロスの汚れ
- 盛大にコーヒーを零してつけたカーペットのシミ
これらは入居者の責とされることもありますので、立ち会いまでにできる限り対処しておきたいところです。
必要な知識を持ち・主張する
汚れと一口に言っても、貸主(大家さん)が負担すべき費用も実は多くあります。例えば借主の責任だけでは無いようなものです。
前述したカビで言えば、
- 日当たりが極度に悪い
- 湿気がある環境である
- カビが生えやすいサッシ
などであれば、普通に生活していてもカビは防げません。そういった場合は貸主が負担すべきだと主張することも可能なケースもあります。
適切に主張するには、まず必要な知識を事前に持っていることも重要です。現在はインターネット上に情報があふれていますから、立ち会い前に調べてみるのも良いでしょう。
何を基準に貸主負担・借主負担するかについての基本として、国が発行するガイドラインも重要です。詳しくは国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」についてをご覧ください。
納得いかなければサインしない
立ち会い時に金額が確定し、サインを要求されるケースも多いです。このサインは内容を確認した旨を意味するため、サインをしてしまうとその後の交渉が難しくなることがあります。
もしも立ち会い時、その時点で納得がいかないことがあれば、その場で立ち会い担当者と交渉をしましょう。
交渉が苦手な方は、現在は退去時の立ち会いの交渉を代行してくれる業者もいます。もちろん費用はかかりますが、状況によっては数十万単位で取られてしまうこともめずらしくはないのが退去時の精算です。
そう考えると、選択肢の一つとも言えるかもしれませんね。
なお、その場では確定金額は出されずに、サインをした後で、後日正確な見積もりが届くケースもあります。その場合、内容が不当な場合はサイン後でも交渉すべきでしょう。
立ち会いで指摘されがちな箇所はどこ!?
立ち会いでは、不動産業者の社員・リフォーム業者・または大家さん等が立ち会います。だれが立ち会うにしても、チェックされるポイントはおおよそ共通していると言って良いでしょう。
ここでは室内の主要項目ごとに、どういった場所がチェックされやすいか見ていきたいと思います。
キッチン
キッチンはパーツが多いため、以下の部分に特別な問題が無いかをチェックしてみてください。
- シンク
- 蛇口
- ガスコンロ
- 壁面タイル
- 戸棚
- 吊り戸棚
- レンジフィルター・換気扇
極端な汚れが無い場合は、通常の利用の範囲(=問題無し)と言えそうです。もともとキッチンは油を利用した調理や水を使うためにあるのですから、多少の汚れは伴うものだからです。
悪目立ちしやすい点として、キッチン周りのコーキングにはカビが生えやすいです。生活の範囲とは言えないほどのカビであれば、立ち会いまでには目立たなくなるレベルまで落としておくとより安心です。
浴室
水回りだけに、こちらも全体的にカビに注意が必要です。全くメンテナンスをしていないと、黒カビだらけになることもあるからです。
浴槽を交換するほどのカビとなることは少ないと思いますが、せめてギョッとされない程度に自分でお掃除をしておきたいところですね。
また、特に指摘されがちなのが浴室の鏡にこびりついたウロコです。このウロコは、退去後のハウスクリーニングのオプションになるケースもあり、別途費用を取られた……というようなケースも散見します。
また、ウロコを落とせば使えるような場合でも「ウロコを落とすと輝きが鈍くなるので交換します」などと言われて交換代金を請求されるようなことも。
ウロコは「鏡用うろこ取り」がホームセンター等に売っていますので、立ち会い前に対処を検討するのも一案です。
普通に生活をしていればウロコはできるものです。しかしながら入居者が清掃をすれば出来づらいということもあり、現状は貸主負担・借主負担がグレーになっているようです。自分で除去する場合、鏡の種類や落とし方によっては逆に目立ってしまうこともあるので慎重に検討・実施する必要があります。
トイレ
尿石のこびりつきや、黄ばみ、環ジミは、トイレ掃除をさぼっているとできやすいものです。これらが常識を超えて発生している場合、追加のハウスクリーニング料金を取られる可能性もあるかもしれません。
トイレットペーパーを敷き詰め、市販のトイレ用の洗剤(サンポールなど)をかけてから放置→で取れることもありますので試してみてください。
ただし残念ながら、プロの薬剤でないと落とすのが難しいケースもあります。
洗面台
こちらも水回りですので、カビが酷いなどのケースがあるかもしれません。そういった極端な例を除き、ギョッとされない程度であれば、通常の清掃で十分でしょう。
フローリング・カーペット
借主の責による、フローリングやカーペットのシミ・汚れ・カビ等が特にチェックされます。
汚れやキズによる変色程度であれば、事前に入念な拭き上げや、補修キットなどで対策しておくことが可能です。
ただしフローリングの場合、過剰にこするとその部分だけワックスが剥がれてしまい、かえって目立ってしまう……ということもあるので気をつけましょう。
残念ながら、こびりついたシミやカビは落とすのが難しいとされていますが、できる限り目立たないようにがんばってみてください。
もちろん自分の責でないシミ・カビの場合は、きちんと主張することも重要です。
壁紙・クロス
よくあるのが、壁紙を汚してしまった……というケースです。軽い汚れであれば、メラミンスポンジ(激落ちくん等)に水を含ませ、軽くこするだけである程度は簡単に落とすことが可能です。
ただし壁紙・クロスの種類にもよりますので実施の際はご注意ください。
なお、度重なる喫煙により黄色くなったクロスは、基本的には借主の責になります。全面になるため、お掃除で落とすことは残念ながら難しいかもしれません。
メラミンスポンジは便利で、クロス以外にもいろいろなところで重宝します。しかし表面加工など(ワックスやコーティング)ごと剥がれてしまうことも。かえって目立つこともありますので、使う場所やこする強さには気をつけましょう。
プロへの依頼が得になることも!?
通常は必要ありませんが、特別な事情がある場合は、自分でプロのハウスクリーニングに依頼して解決する方法もあります。
特定箇所があまりに汚れている場合
通常、立ち会い後には貸主が指定する業者のメンテナンス(ハウスクリーニングもその一つ)が入ります。この際、これまでにもご説明したとおり、通常の範囲を超えて汚損がある場合は余計に費用が取られる可能性もあります。
例えば、以下の様なことがあります。
- 相手の言い値で汚れ具合に応じた料金がかかる(いくらになるか分からない)
- 相場より多めに見積もった清掃金額を提示される(一般よりも高額な費用になる)
- 交換可能な部位の場合「丸々交換」で対応される(交換しなくても済むものを交換される)
こういった「特定箇所が極端に汚れている」「自分で落せない汚れがある」などの場合、立ち会い前に自分でプロのハウスクリーニング業者に依頼する方法もあります。
汚れ度合いによって料金が変わらない業者に依頼すれば、トータルでは安くおさまることもあるかもしれません。もちろん、貸主指定の業者でも、そう変わらない可能性もあることは付け加えておきます。
退去までそこそこ日数がある場合は、自分も最後に気持ちよく生活できますし、選択肢に入るかもしれませんね。
プロでも全ての汚れを落とせるわけではないことを理解しておく必要があります。例えばカビを長い間放置すると、内部に侵食し・根を張ってしまい、全て除去するのが困難なことも。事前にプロに相談しておくと良いでしょう。
貸主に不安がある場合
滅多にあることではないと思いますが、貸主または貸主が指定するハウスクリーニング業者の評判が悪い。口コミに敷金をぼったくられたなどの声がある。……などの理由で不安な場合もあることでしょう。
残念ですが、中小企業ではガイドラインを無視した業者も存在する可能性もあります。そういった業者にかかれば、下手をすれば数十万単位で費用がかかることもあるのです。
もちろんめげずに交渉する手もありますが、正直とても面倒臭いですよね。であれば「問題にされそう」な部分があれば、あらかじめ自分で外部のプロのハウスクリーニング業者に依頼するのも一案かもしれません。
まとめ
以上、賃貸退去前のお掃除で敷金を多く取り戻す方法・ポイントについて解説しました。
最後に、前提条件の部分で触れましたが、貸主・管理会社の方針や担当者による当たり・ハズレも多いのが現実です。
近年では法令(正確にはガイドライン)遵守がしっかりしている大手などの場合、多少の破損・汚損でもあっさりと全額敷金が戻ってきた……というケースもあります。逆に昔ながらの従来の業者は、まだまだ借主にとって不利な対応をされることもあるかもしれません。
ハズレの業者にあたってもできる限り敷金を多く取り戻す為には、立ち会い前のお掃除および、知識で武装するのが良いと思われます。